総量規制とはどんな決まり?適用外のサービスと金融機関を解説

貸金業法における決まりの1つに、総量規制があります。
総量規制とは、年収の3分の1を超える借入はできないという決まりですが、一部の金融機関や商品には適用されないこともあるので事前の確認が必要です。
そこで本記事では、カードローンを含めた融資商品と総量規制について詳しく説明します。
最後まで読めば、どんな融資商品に総量規制が適用されるのか、利用にあたっては何に気を付けるべき点が理解できます。
総量規制とは

総量規制とは、貸金業者に定めれている法律で、年収の3分の1を超える貸付を禁止にするという決まりです。

たとえば、年収300万円の人の場合、貸金業者からは最大で100万円までしか借入ができません。
総量規制は2010年6月に完全施行された改正貸金業法において設けられた規定で、消費者の利益を保護する目的を有しています。
過度な融資を制限し消費者を保護するための法律
総量規制は、過度な融資を制限し、消費者を保護するために設けられています。
ここで、総量規制が設けられた背景にも触れておきましょう。
総量規制は、2010年6月から施行された改正貸金業法において設けられた規制です。
それ以前には総量規制が存在しなかったため、複数の貸金業者から多額の借入ができました。
そのため、毎月の返済額が多額になり「返済が苦しいので別の貸金業者から借入をし、そのお金で返済をする」という利用者が後を絶たなかったのです。
また、利用者と従業員が取り立てが原因でトラブルを起こすなど、貸金業者の運営にも問題が散見されました。
そこで、このような多重債務問題や不適切な運営など貸金業を巡る問題を解決すべく、2006年12月に貸金業法が抜本改正されています。
その後は段階的に施行後、2010年6月から完全施行されました。
改正貸金業法では、以下の4つをポイントに、総量規制を含めたさまざまな施策が講じられています。
改正貸金業法の4つのポイント
- 貸金業法の適正化
- 過剰貸貸付けの抑制
- 金利体系の適正化
- ヤミ金融(違法金融業者)対策の強化
1.貸金業の適正化
貸金業法の改正前から、貸金業を営む際の貸金業登録は義務付けられていました。
しかし、改正法においては貸金業の適正化を図るべく、登録の要件が強化されています。
主な改正点を紹介します。
貸金業登録の要件に関する改正点
- 貸金業を行う上で必要な純資産額が5,000万円以上に引き上げられた
- 登録拒否事由に「貸金業を的確に遂行するために必要な体制が整備されていると認められない者」「他に営む業務が公益に反すると認められる者」が追加された
- 貸金業務取扱主任者の配置が義務付けられた(貸金業の業務に従事する者50名につき1名以上の割合)
2.過剰貸付けの抑制
利用者の返済能力を超える過剰貸付を抑制するために、総量規制が導入されました。
また、貸金業者に対しても信用情報機関の信用情報の利用を求めています。
加えて、1社で50万円超、または他社と合わせて100万円を超える貸付けを行う場合には、利用者から収入証明書の提出を受けることが義務付けられました。
3.金利体系の適正化
従来は、グレーゾーン金利と言って、出資法の上限金利(年29.2%)と利息制限法の上限金利(最大年20%)の間の金利帯であっても、条件付きで有効とみなされていました。
しかし、改正貸金業法が完全施行された2010年6月18日以降は、出資法における上限金利も年20%に引き下げられています。
4.ヤミ金融(違法金融業者)対策の強化
ヤミ金融(違法金融業者)撲滅のため、「著しい高金利での貸付け」や「無登録営業」に対する罰則が強化されています。
無登録営業をした場合、10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれが併科されます。
貸金業者が利用者の年収を知ることができる理由
総量規制が設けられている関係上、利用希望者の年収は審査においても重要な情報となります。
ここで、なぜ貸金業者が利用希望者の年収を知ることができるのかを解説しましょう。
まず、カードローンの申込にあたっては、職業や勤務先や勤続年数、年収について申告しなくてはいけません。
審査担当者は社内のデータベースや信用情報機関から取り寄せた情報を用いて、利用希望者から得られた情報の正確性を精査します。
加えて、利用希望額が以下のいずれかに当てはまる場合は収入証明書の提出を求めています。
収入証明書の提出が求められる場合
- 1社で50万円を超える場合
- 1社で50万円を超える場合・複数社で100万円を超える場合
収入証明書として利用できる書類の例は以下の通りです。
収入証明書として利用できる書類の例
- 源泉徴収票(直近の期間に係るもの)
- 支払調書(直近の期間に係るもの)
- 給与の支払明細書(直近の2か月分以上(地方税額の記載があれば1か月分)のもの)
- 確定申告書(直近の期間に係るもの)
- 青色申告決算書(直近の期間に係るもの)
- 収支内訳書(直近の期間に係るもの)
- 納税通知書(直近の期間に係るもの)
- 納税証明書(直近の期間に係るもの)
- 所得証明書(直近の期間に係るもの)
- 年金証書
- 年金通知書(直近の期間に係るもの)
これらはいずれも、公的機関や企業が発行する書類です。

FP國弘
客観的に信頼性の高い書類であるため、利用希望者の年収を証明する能力もあるものとして扱われます。
なお、年収には会社から受け取る給与以外にも、年金、恩給、不動産の賃貸収入などが含まれます。
会社で働いていなくても、年金や恩給を受け取っていたり、不動産の賃貸収入があったりする場合はカードローンの申込ができるケースもあるので、事前に確認しましょう。
総量規制の対象となる貸金業者とは

総量規制は貸金業法における規定であるため、貸金業者のみが対象となります。
貸金業者に含まれる会社の具体例を挙げてみました。
貸金業者に含まれる会社の具体例
- 消費者金融
- クレジットカード会社
- 信販会社
これらの会社が提供するお金の貸し借りを前提とするサービスが貸金業法による規制を受けると考えましょう。
総量規制の対象となる代表的なサービスは以下の2つです。
総量規制の対象となる代表的なサービス
- カードローン
- クレジットカードのキャッシング機能
カードローン
カードローンとは
カードローンとは、主に消費者金融が個人向けの小口融資商品のことです。
カードローンで借りたお金は、基本的に自由に使うことができます。
利用にあたっては専用のローンカードを使う場合が多いですが、昨今はスマートフォンアプリで代用するケースも増えてきました。
クレジットカードのキャッシング機能
クレジットカードのキャッシングとは
クレジットカードのキャッシングとは、クレジットカードの利用可能枠を使って借入を行うサービスのことです。
こちらもカードローン同様に、借りたお金の使用用途は基本的に自由です。
一般的には、クレジットカード会社の自社ATMや銀行等の提携ATMを使います。

FP國弘
クレジットカードに付帯している国際ブランドに対応さえしていれば、海外のATMでも利用が可能です。
総量規制が適用されないカードローン

先述した通り、消費者金融や信販会社、クレジットカード会社が提供するカードローンは総量規制が適用されます。
しかし、カードローンの中には総量規制が適用されないものもあるので確認しましょう。
銀行系カードローン
都市銀行、地方銀行、ネット銀行など「銀行」で扱うカードローンには、総量規制が適用されません。
あくまで銀行法に基づいて提供する商品であり、貸金業法には基づいていないためです。
ただし、利用者保護の観点から、過剰な貸付けが行われないよう、銀行ごとにルールが設定されています。
他の銀行や消費者金融等での利用残高も含め、年収の3分の1を超える場合は借入が極めて難しいでしょう。
おまとめローン
返済用のローンである、「おまとめローン」も総量規制の対象外です。
おまとめローンとは
おまとめローンとは、複数の会社から借入しているローンを一本化するための商品を指します。
おまとめローンを使うと、金利や毎月の返済額、総返済額を引き下げる効果が見込めます。


FP國弘
おまとめローンは貸金業者が提供しているケースもありますが、「顧客に一方的に有利となる借換え」として、総量規制における「例外貸付け」に該当するため、総量規制の対象外になります。
総量規制が適用されない貸付け

総量規制が適用されない貸付けであれば、年収の3分の1を超える額を借りることも可能です。
具体的な方法について解説します。
総量規制が適用されない貸付け
- 除外貸付けに分類される契約を結ぶ
- 例外貸付けに分類される契約を結ぶ
1.除外貸付けに分類される契約を結ぶ
多額の借入が必要になるなどの理由から、総量規制に含まない貸付けとして「除外貸付け」が設けられています。
これらに分類される契約であれば、総量規制にかかわらず結ぶことが可能です。
また、借入額も借入残高に算入されないため、あらたにカードローンやキャッシングなどのサービスを利用する際にも影響しません。
除外貸付けに分類される契約の具体例を紹介しましょう。
除外貸付に分類される契約の具体例
- 不動産購入のための貸付け
- 自動車購入時の自動車担保貸付け
- 高額療養費の貸付け
- 有価証券を担保とする貸付け
- 不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け
- 売却予定不動産の売却代金により返済される貸付け
不動産購入のための貸付け
住宅ローンや不動産投資ローンのことです。
自分たちが住む家を建てる、購入する際に借りるのが住宅ローンで、人に貸して収入を得るための物件を建てる、購入する際に使うのが不動産投資ローンです。
多くの場合、住宅ローンや不動産投資ローンは年収を超える額を借入することになります。
また、建てる、購入する予定の物件を担保にお金を借りるため、万が一返済が滞った場合は債権者(借入先となる銀行など)が競売にかけ、回収することも可能です。

FP國弘
このような背景もあるので、住宅ローンや不動産投資ローンは総量規制に含まれない貸付として扱われています。
自動車購入時の自動車担保貸付け
いわゆる自動車ローンのことです。
信販会社など、本来は貸金業法の規制のもとに運営される会社が提供するローンであっても、除外貸付けとして扱われます。
先ほど触れた住宅ローンや不動産ローンと同様、自動車ローンも延滞・滞納が続けば、債権者が車を競売にかける可能性があります。
高額療養費の貸付け
高額療養費の貸付けは、医療費の一時立て替え払いみたいなものと考えましょう。
前提として、高額療養費制度について理解する必要があります。
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、同じ月に高額な医療費の自己負担が必要となった際に、限度額を超えた分について払い戻しを受けられる制度です。
限度額は所得金額に応じて決まります。
ただし、高額療養費制度の適用が受けられる場合でも、本来は自己負担限度額を超える部分は一度自分で立て替えしなければいけません。
しかし、何らかの理由で自己負担限度額を超える部分までの立て替えが難しい場合は、高額療養費の貸付けを利用できます。
高額療養費の貸付けを利用したとしても、最終的には社会保険から給付を受け、全額回収することが可能です。

FP國弘
制度設計上、貸し倒れるリスクは発生しえないことから、総量規制に該当しないものとして扱われています。
なお、貸付金の弁済は、支給された高額療養費と相殺して行われます。
事前に医療費が高額になりそうだとわかっている場合は、あらかじめ限度額適用認定証を取得しましょう。
限度額適用認定証を保険証と一緒に医療機関の窓口に提示すれば、1ヶ月あたりの窓口での支払が自己負担限度額までになります。

FP國弘
限度額適用認定証の申請方法は、加入する健保組合や市区町村の担当部署に問い合わせてください。
有価証券を担保とする貸付け
株式などの有価証券を担保とする貸付け(証券担保ローン)も、総量規制の対象外となります。
担保として利用できる有価証券の一例は以下の通りです。
証券担保ローンにおいて担保として利用できる有価証券の一例
- 国内上場株式(ETF、REIT、ETN等を含む)
- 国債、政府保証債、地方債、社債(転換社債型新株予約権社債を含む)
- 非上場投資信託
具体的な扱いは、証券担保ローンを扱っている会社によっても異なるため、事前に確認しましょう。
不動産(個人顧客または担保提供者の居宅などを除く)を担保とする貸付け
土地や建物などの不動産を担保にした貸付(不動産担保ローン)も総量規制の対象外となります。
ただし、自宅を担保にする場合は除外貸付けにはあたらず、総量規制の対象となるため注意してください。
売却予定不動産の売却代金により返済される貸付け
すでに売却中、売却予定の不動産の代金で返済する前提の借入も、除外貸付けにあたります。
借入額が不動産の売却価格以内であれば問題ありません。
2.例外貸付けに分類される契約を結ぶ
例外貸付けに分類される契約を結ぶことでも、総量規制を超えた額を借り入れることが可能です。
さきほど紹介したおまとめローンも例外貸付けに分類されます。
一点注意したいのが、借入額が借入残高に算入される点です。
つまり、例外貸付けを加えた借入残高が年収の3分の1に達してしまった場合、その後は除外貸付けや例外貸付け以外の借入ができなくなります。
制限をなくすためには、返済をして借入残高を減らすしかありません。
ここで、例外貸付けに分類される契約をいくつか紹介しましょう。
例外貸付けに分類される契約の例
- 配偶者と合わせた年収3分の1以下の貸付け
- 社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付け
配偶者と合わせた年収3分の1以下の貸付け
いわゆる配偶者貸付のことです。
配偶者貸付とは
配偶者貸付とは、配偶者と自分の収入を合算した金額の3分の1まで借り入れを認めるという制度のことです。
たとえば、妻が専業主婦(年収0円)、夫が会社員(年収750万円)という夫婦がいたとしましょう。
この場合、配偶者貸付を利用すれば250万円まで借入ができます。
社会通念上緊急に必要と認められる費用を支払うための資金の貸付け
社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための借入も、例外貸付けとして総量規制の対象外となります。
具体的なケースをいくつか挙げてみました。
社会通念上、緊急に必要と認められる費用を支払うための借入が想定されるケース
- 財布を落としてしまい、所持金がゼロになってしまった
- 家族や知人に急な不幸があり、香典を用意しなくてはいけない

FP國弘
ただし、借入できる額は10万円以下で、3ヶ月以内に支払わなければいけないため、利用にあたっては注意が必要です。
総量規制とカードローンに関するよくある質問
Q.消費者金融のビジネスローンは、総量規制が適用される?
A.事業資金の借入には、総量規制は適用されません。
個人事業主がビジネスローンなどの商品を使って事業資金の借入をする場合、総量規制は適用されません。
顧客の利益を害することがない貸付け(例外貸付け)として扱われるためです。
事業・収支・資金計画を提出し、返済能力があると認められれば総量規制に関わらず借入が可能になります。
Q.クレジットカードでの買い物は総量規制の対象になりますか?
A.クレジットカードでの買い物は総量規制の対象にはなりません。
クレジットカードで買い物をした場合、ショッピング枠を利用することになります。
その場合、適用される法律は割賦販売法であって、貸金業法ではありません。
根拠となる法律が異なる以上、貸金業法上の規定である総量規制も適用されないと考えてください。
一方、クレジットカードのキャッシング枠を使ってお金を借りた場合は、貸金業法および総量規制が適用されます。
カードローンなど、貸金業法の規制が及ぶ他の商品と併せた借入残高が年収の3分の1を超えることになる場合は利用できないので注意してください。
Q.日本学生支援機構の奨学金を借りています。総量規制の対象になりますか?
A.日本学生支援機構の奨学金の借入は総量規制の対象になりません。
日本学生支援機構の奨学金は独立行政法人日本学生支援機構法という法律に基づいて行われます。
貸金業法による規制は受けないため、総量規制の対象になりません。
ただし、貸金業法による規制は受けないものの、3ヶ月以上の延滞・滞納をした場合は個人信用情報機関に登録されます。
監修者コメント
MBA(経営学修士)、2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP
國弘 泰治
監修者プロフィール貸金業法の対象と対象外を解説
貸金業法の対象となるものと対象にならないものがあり、消費者金融やクレジットカード会社そして信販会社が対象となります。
貸金業法では総量規制というものがあり年収の1/3が対象となっており、代表的なサービスはカードローンやクレジットカードのキャッシング機能が対象です。
総量規制が必要な理由としては、過剰な貸し付けを規制して多重た債務者を救済する目的のため、過剰な貸し付けをさせないためにできたものといえます。
この記事の監修者
MBA(経営学修士)、2級ファイナンシャルプランニング技能士、AFP
國弘 泰治
香川大学大学院を卒業後、投資用マンションの営業を行う。その後、FP資格を取得し独立。現在は資産運用の悩みを解決する、MBA・FPオフィスALIVEの代表を務めている。得意分野は不動産投資と海外投資、相続・事業承継、法人向け資産運用。
HP:MBA・FPオフィスALIVE
監修者プロフィール